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大谷翔平191kmホームランの本当の凄さを上原浩治が解説!「打ち取っても恐怖が残る打者」

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグ、ドジャースの「打者・大谷翔平」が春先から好調をキープしている。

 本塁打では松井秀喜さんが放った日本人最多記録(175本)を更新し、26日のブルージェイス戦では、3試合ぶりの7号ソロをマーク。直近5試合で3発とハイペースな本塁打だけでなく、高打率もキープする。

 最近の報道では、大谷選手の打球速度を取り上げるケースが増えてきた。報道をみると、23日のナショナルズ戦で打った6号ソロの打球速度は118・7マイル(約191キロ)。本塁打では自己最速の打球だったことが紹介されている。

 打球速度は、スイングスピードが速く、しっかりとボールに力を伝えることができていることの表れだろう。バットの軌道が遠回りせず、コンパクトにボールに力を伝えるスイングということにもなる。また、スイングスピードが速いということは、振り始めてからボールに当たるまでの時間も短くなり、それだけボールの見極めを長くできることにつながっているはずだ。

 投手の視点で言えば、打球速度の数字よりも、こうしたスイングで振ってくるという意味で脅威に感じる。

 また、高打率が物語るように、一発を放つパワーに加え、ミート力も高い。

 あくまで私自身の経験だが、一発もあって、打率も高い選手との対戦では、一発よりも安打につながる率の高さを警戒することが多かった。今の大谷選手のような打率だと、3打席で一本、4打席だと2本の安打を覚悟しなければならなくなる。大谷選手の場合には、塁に出たら盗塁もあるため、走者を気にしながら次の打者と勝負するというのは、投手からすれば、さらなる負担を強いられることになるだろう。

 しかも、大谷選手は、初球からでも、ストライクゾーンのボールであれば、積極的に振ってくる。これも投手心理からすると苦しい。

 ボール球を打ってくれればいいが、大谷選手のスタンスは、あくまで「好球必打」で攻撃的にバットを振ってきている印象だ。

 投手はカウントを優位に持って行くためにも、初球はストライクを取りたい。際どいコースで見逃しが取れれば理想的だが、初球から狙われている場合には、ストライクゾーンをかすめるボールは打ってくるケースを想定しないといけない。すると、投げる側は、安易にカウントを取りに行けず、初球から「勝負球」を投じなければいけなくなる。結果的に、打ち損じてくれたときには、淡泊な攻撃に見えるかもしれないが、投手の立場で言えば、「ストライクゾーンなら初球からでも」というタイプの打者との対戦は、打ち取っても決して楽な心理ではない。

 大谷選手が高打率をキープしている要因には、自身の高い打撃技術に加え、ナ・リーグ西地区の首位を走るメジャー屈指の強豪、ドジャースへの移籍が効果をもたらしていることも忘れてはならない。

 前後を打つ選手が好打者だと、大谷選手に走者がいるケースで打席が回ってくることが増える。また、敬遠や際どいボールで勝負しながら最終的に大谷選手を歩かせたとしても、走者をためて後ろに控える中軸に回すことになり、傷口を広げてしまうリスクが伴う。ドジャース打線の2番打者に組み込まれている大谷選手と対戦する場合、投手もある程度は一発を覚悟してでも勝負にいったほうがベターだという計算が働いてもおかしくはない。

 もちろん、理屈ではそうでも、結果を残すのは決して簡単なことではない。相手投手が勝負してくるボールを打って高打率をキープし、一発も量産していくことができているというのは、大谷選手にそれだけの力があってこそだと言える。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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